黒田家の「家宝」のうち刀剣の展示をメインにご紹介
九州・福岡県の福岡市博物館にて2023年9月15日(金)~11月5日(日)に開催の「黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史」展。
この展覧会では、旧福岡藩主・黒田家より福岡市美術館に寄贈・寄託された貴重なコレクションをのうち、「家宝」というキーワードで選出したものを展示しています。
わたしたち江戸メディアでは、「九州の刀が見たい」と銘打って九州で見られる刀剣、刀鍛冶の鍛冶場跡や墓所等の「聖地」を特集していますので、この記事では展示品のうち、刀剣を中心にご紹介していきたいと思います!
シイノカヲ
刀剣好き女子ライター。趣味は、九州で刀剣が見られる場所および刀鍛冶の足跡関係の聖地を探すことと、その過程でスパイスカレーの美味しい店を探すこと。
藤城洋次
江戸漫画絵師。この記事のイラストも担当。最近はスマホの位置ゲー「信長の○望・出陣」を理由に日々色々な土地を歩くのが楽しい。
「黒田侯爵家の名品」展ではこんな刀が見られます
福岡市博物館で黒田家関係の刀というと……。
圧切長谷部とか日光一文字、安宅切あたりを他の展示で見た覚えがありますね~。
「黒田公爵家の名品」展では、そのあたりが展示されてるんですかね?
ふふふ……。今回の刀剣展示はこんなラインナップなのよ!
- 刀 名物「圧切長谷部」
- 太刀 名物「日光一文字」
- 刀 名物「安宅切」
- 脇差 名物「碇切」
- 刀「和泉守兼定」
- 刀「二字国俊」
- 刀 大仙兼元
- 太刀 銘「安家」
- 太刀 銘「國村」
- 刀 名物「岩切海部」
- 鎗「勝光宗光」
おおっ!刀メインの展示じゃないのに、意外とたくさん見られますね?
そうなんだよ!
しかも、黒田侯爵家の「家宝」というキーワードでの展覧会だから……。
「移動する『家宝』」というカテゴリの展示室があって、刀剣の入札などの売却周りの文書などの資料があったりするのも、あまり他で展示されないようなものだから面白いのよ。
三名槍の「日本号」が明治期に黒田家から離れた時期があったんだけど、大正時代に旧福岡藩士で実業家になった方が購入し、黒田家に寄贈した時の感謝状とか。
日本号は、別の展示室で開催している企画展のほうで見られます。
「黒田侯爵家の名品」展を開催している特別展示室には展示していないのでご注意下さい!
特別展のチケットに企画展チケットもついてますので、ぜひ併せて行ってみて下さい~。
それでは、紹介していきます。
なんと、一部を除いて撮影OK(※)となっておりました!
※撮影不可なのは「3 移動する『家宝』」でした
福岡市博物館のご厚意に感謝いたします……!
刀剣展示は「1 黒田家の『重宝』」から。圧切長谷部・日光一文字そして碇切など
「黒田侯爵家の名品」展は、全部で6ブロックでの構成ですが、刀剣の展示は2ブロック目の「1 黒田家の『重宝』」からありました。
もちろん、刀剣以外にも素晴らしい品が多数展示されているのですが(※)、この記事では刀剣メインでご紹介させていただいているのでご了承下さい……!
※展示品の一覧は、公式ページにて出品リストのPDFを参照下さい
というわけで、紹介していきます。
展示エリアに入ると、正面に圧切長谷部と日光一文字が並び、安宅切、碇切などなどずらずらっと見られて圧巻です!
刀 名物「圧切長谷部」
「圧切長谷部」は、黒田如水 (孝高、官兵衛) が信長から拝領したとされる刀です。信長が膳棚の下に逃げ込んだ茶坊主を、手討にする際、刀を振り下ろせなかったため刀を押しあてそのまま圧し切ったことに由来しています。
太刀 名物「日光一文字」
「日光一文字」は、豊臣秀吉の小田原攻めの際に、黒田如水が北条氏直の降伏の仲介を行った礼として贈られたものとのことです。
日光一文字の箱も並んで展示されています。美しい葡萄柄なのでこちらも必見です。
共に北条家から来た法螺貝も、少し離れたところに展示されていますのでお見逃しなく!
脇差 名物「碇切」
「碇切」はその名の由来が書物によって違うようなのですが……。
・朝鮮出兵の際に黒田長政が敵を碇とともに切り落としたという説
・黒田如水が朝鮮へ出発の折に船の碇を切って出航したことにちなむという説
……があるようです。
脇差サイズなのは、第2代藩主黒田忠之の時に長さを改めたかららしいです。
刀 名物「安宅切」
「安宅切」は、黒田如水が四国攻めの際に使用した刀とのことです。
名前の由来は不詳とのことなのですが、黒田家に伝わる文書には……。
如水が淡路 (兵庫県) にて、三好氏の一族安宅河内守の居城由良城を攻略した際のエピソードが紹介されているらしいです。
つまり、安宅氏を切ったゆえの「安宅切」と推測されるとか……。
刀 和泉守兼定
美濃国関 (岐阜県関市) の 刀工である和泉守兼定の手によるこの刀は、黒田長政が実際に帯刀したものらしいです。
実際にどの戦いで使われたのか気になりますね……!
「二ツ胴」の銘が彫られています。これは試し切りで二人分重ねた胴体を切れるくらいの切れ味の刀という意味とのことです……。
刀 二字国俊
こちらも和泉守兼定とともに、黒田長政がたびたび戦場に帯刀した刀とのこと。どんな光景を見ていたのか……ドキドキしますね!
鎌倉時代後期に活躍した刀工である来国俊による刀なのですが、銘が「来国俊」 「国俊」の2種あり、区別して後者を二字国俊と呼ぶそうです。
刀 大仙兼元
こちらは次の展示室「2『家宝』の誕生」にあります。
切れ味がよいことに定評があった美濃国の刀工・関鍛冶の兼元の作、黒田長政から子の忠之に譲られたとのことです。
貴重!黒田家から出た刀たちは「3 移動する『家宝』」にて。
そして次の展示室「3 移動する『家宝』」では、売却されたりして黒田家から出た品が展示されています。
こういうカテゴリでまとめられる機会はそうそう無いですし、貴重な機会だと思われます!
この展示室のみ撮影不可でしたので写真は無いのですが、こちらに展示されていた刀はこちらの三振でした。
- 太刀 銘「安家」(国宝・京都国立博物館)
- 太刀 銘「國村」(重要文化財・出光美術館)
- 刀 名物「岩切海部」(福岡県指定有形文化財・個人蔵)
「4 新たに加わる名品」にも「鎗 勝光宗光」が。そして日本号ゆかりの品もあり
そして刀剣が展示されている最後の展示室。
「4 新たに加わる名品」には、「鎗 勝光宗光」が展示されています。
合渡川の戦いで黒田長政が使用したとの記録があるそうです。
関ヶ原の戦いの前哨戦となった慶長5年(西暦1600年) の戦いですね……おお……。
そして三名槍「日本号」へ……
ああ……たくさん見た……!
この記事では紹介していないものたち……。
黒田如水・長政の使ったものを中心とした黒田家代々の鎧……。
歴代藩主の肖像画……。
城に飾られた襖絵や屏風絵、茶器なども素晴らしいものがたくさんで圧巻だったよ……!
あの……。余韻に浸っているところすみません……。
「日本号」を見に、企画展示室にも行かないと……。
あっ……忘れていたわけじゃないのよ!
企画展は、特別展を出て右に受付があります。そこでチケットを出すと入れます。
企画展は4つの展示室があります。
日本号は、常設展エリアの左奥の展示室に入りまして、左側の展示ケースに鎮座しています!
初めて見たときは、うわ、大きい!って思ったよね……。
螺鈿がキラキラと美しい柄、鞘も必見です!
さすが帝や将軍家の持ち物であったとされる槍と思わされます。
鎬にある彫り物も繊細で素晴らしいです。
しかもその裏側に、実戦で使われた証拠である、敵の刃を受け止めた打ち込み疵が残っているそうです……!
隣の博多商人・嶋井家展も楽しくておすすめ
そうそう、日本号のある展示室の隣、3つの展示室では、企画展もいくつか開催しているんですけれど。
そのうちの1つ「嶋井家文書の世界」超おすすめです!
えっ……嶋井さん……ですか? すみません知らない……。
(なんか地味そう……(ボソリ))
……(失礼発言はスルーして)ご説明しましょう。
企画展「嶋井家文書の世界」は、博多商人・嶋井(島井)宗室が戦国武将たちとやりとりした手紙などの文書の特集展です!
織田信長に茶会のメイン客として招待されたり。
豊臣秀吉から、美術品の交換を依頼されたり。
千利休と手紙をやりとりしていたり。
博多の豪商って、そんな当時の最高峰の政治家たちにとっても重要だったんだと気付かされます。
あと、お茶のつながりって特に当時は、想像以上に色々深いのよね……。
現代も趣味の集まりとかでつながってビジネスにも……ってのは良くあることだし。
それと手紙類は、描かれている内容に人間臭さがにじみ出ていたりして、歴史上の人物が身近に感じられるのところが楽しいですよね。
例えば、千利休から宗室に宛てた手紙も展示されていて。
徳川家康が豊臣秀吉に贈った茶器についての内容で、
「確かに珍しいものだが、(数々の名物茶器を所有している)自分たちにとっては別にそんなでもない」とか書かれていたり……。
こんな感じの手紙などが、わかりやすい解説で色々見られて面白かったです。なのでぜひ一緒に見てみて下さい!
- 会期
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2023年9月15日(金)~11月5日(日)
- 開館時間
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9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日/月曜日(ただし、9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開館し、9月19日(火)、10月10日(火)は休館) - 料金
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一般 : 1,600円 高校・大学生 : 1,200円 小・中学生 : 500円
- 公式サイト
- https://museum.city.fukuoka.jp/exhibition/special/2023/kuroda-meihin/
- 会場
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福岡市博物館